はり灸を体験されたことのない方へ

はり灸治療を受けられたことがない方にとっては、どういった感覚なのか。
熱い?痛い?など怖いイメージもあるかもしれません。
古来よりある治療方法ではありますが、
ハードルの高さを感じる治療方法であることも事実です。

そんなはり灸を体験されたことのない方へ、
この治療方法がどういったものなのかを、説明いたします

鍼の痛みは?


鍼(ハリ)は、どうしても注射の針を連想してしまいがちですし、
お灸は、よくわからないけど、「熱い、やけどする」という印象を持つと思います。

よく皆さんが連想する注射針は、液状の薬剤を注入するために、身体に意図的に切り込みを入れるもので、管(くだ)に近いものです。

一方で、現在の日本の多くの鍼灸院で一般的に使われる鍼は「毫鍼(ごうしん)」といいます。
太さは、髪の毛よりもほそく、先が丸いものになります。
当院で使用する鍼は、長さ1〜4cm<,太さ0.10〜0.25mm程度のものです。

ですので、皮膚を傷つけ、切り開くというよりは、皮膚の間を、潜り込むように患部に入り込んでいく当院で使用する鍼も、そのような細い鍼を使用しております。

皆様が一番気になるであろう痛みの程度については、

「全く痛くないか、痛くても注射針の痛みの数分の1の痛み」
と考えていただければよいかと思います。

実際に体験されると
「えっ?もう(刺さったの?)入ったの?」と感じられる方がほとんどです

また、鍼(はり)は、体内にはいっていくものだけではありません。
一般的に想像しやすいもので言えば「ピップエレキバン」のような皮膚に貼り付けるだけのものや、ヘラのようなもので皮膚の効果が認められた箇所に対して刺激を与えることも「鍼治療」のひとつです。

必ず長い鍼を使わなくてはいけない、というわけでもございませんし、症状や、体質に合わせて使用するものを選択していきますので、不安感や恐怖感があるのであれば、遠慮なくご相談ください。
また、衛生面につきましても、使い捨ての鍼を使用いたしますのでご安心ください。

お灸は熱い?


私自身もそうでしたが、ピラミッド型の、三角形のお灸を、イメージされる方が多いと思います。
このお灸は、昔ながらのやり方で、あえてやけどを作り、回復を促進する、という方法のひとつのお灸です。
現代では、あまり一般的ではなく、当院の治療でも用いません。

では、どのようなお灸を用いるかと申しますと、台座灸といい、何か土台をかましたもぐさに火をつけて、広範囲に熱を伝える方法や、棒状の大きな線香のようなお灸に火をつけて、遠くから温める方法。
または米粒大、もしくは米粒大の半分くらいの大きさのお灸を皮膚面に立てて、一瞬で燃やす方法などがあります。

温めるお灸は、温めることが目的ですので、やけどの危険がないように配慮いたしますし、米粒大のお灸を燃やす場合は、やけど防止のシールを貼り、その上で燃やすことをします。
これは透熱灸という名前の方法でして、鍼がどうしてもダメ、というお客様に、鍼刺激の代わりに使用することもあります。
燃えきるのが一瞬なので、チクっとした刺激に感じられることが多いです。

鍼や灸を用いる目的


鍼灸には、古来現代、さまざまな流派があり、理論があります。
そのほとんどに共通しているのは、いわゆるツボ(経穴)と呼ばれる反応点に刺激を伝えることです。

それぞれのツボにどのような効果があり、効き目があるのか等は、古代から現代までの、統計学的な臨床の積み重ねでの経験則として、現代に伝わっています。

刺激の方法も様々で、弱い刺激と強い刺激の違いで、効果が異なることもあります。

ツボはそれぞれ、経絡という流れに沿って、エネルギーのつながりがある、という中国医学の理論があり、当院の治療も、中国医学の理論を基にした治療を行っています。

ただ、経絡の存在を証明することや、経絡のエネルギーを目視するための証明などは、残念ながら、現代でも完全な科学的根拠を得ることができていません。

理由としましては、
・個人による個体差が大きいこと
・同じ個人でも、体調によって反応が変わること
・刺激の強弱が、常に一定ではないこと
・術者によっても、刺激の質が変わること
・ツボの位置が、個体差が大きく画一でないこと
等、「確実な再現性がなく、検証の試行に向かない」ということが挙げられます。

ただし、その理論に基づいての治療には、一定の効果が表れることが多くありますので、現代でも、職業のひとつとして残っているのだと考えております。

治療の効果を出す刺激の方法として、昔から鍼やお灸が選ばれているということがありますので、理論を実践するために、再現度を高める必要性からも、鍼や灸での刺激は、必要なのではないかと思われます。

鍼灸院の利用のしかた


「体が悪くなる前のメンテナンス」として利用されることが、一番の理想です。

ただし、現実には、
「医者に行ったけれどよくならなかった」等
「現代医学と違うアプローチを試してみたい」という時に利用される方が多いです。

現代の医学は、西洋医学のベースに基づき、最新鋭の機械や、技術、薬など、多岐に渡る治療が行われています。
みなさんが、体を悪くしたときにお世話になるのは、やはり病院に信頼があるからではないかと思います。

ただし、西洋医学にも、良い点以外に、見落としてしまいがちなものがあります。

それは、「検査にひっかからない病気」については、「ないものと同じ」とみなされることが多いという点です。

たとえば、あちこち体が凝っている、なんとなくだるい、
等の症状で病院に行き、「色々検査したけれど、何もないと言われた」という場合等です。

こういう場合、現代の医学では、特に病名がつかなかったり、
慢性疲労だね、と、鎮痛剤、ビタミン剤を出して終わる、ということがあります。

どこも悪くないのに、腰がつらい
どこも悪くないのに、肩がつらい
どこも悪くないのに、頭がしめつけられるように痛い
どこも悪くないのに、目が疲れた感じがする
どこも悪くないのに、体がだるい
どこも悪くないのに、夜眠れない

数字に出ない、このような症状には、鍼灸治療はかなりの効果を挙げることがあります。

その理屈は、病気の見方が違うので、「お医者さんで病気と診断されていないものが、東洋医学(中国医学)的には実は病気」ということがあるからです。

例えば、よく頭が痛くなる、という患者さんの場合、CTをとって、MRIをとって、脳自身や、脳の血管に異常がない場合は、肩〜首筋肉の緊張性のもの、という見方をされ、特に問題視されないケースもあります。

東洋医学的な臨床では、脈や舌の色、形状、顔の色、皮膚の状態、吹き出物、お腹の張りなどなど、精密機械が無かった時代のお医者さんが行っていた、人の体全体を見て診断することを行いますが、経絡理論は、体の上下を長い巡る、線のようなもので考えますので、どこの経絡に異常があるか?という推論を立てるために、どこに痛みが出るか、出やすいか、などを聞き取りしたり、頭の異常でも、下半身からつながっている経絡に異常があり、頭への栄養(気や血)がうまく循環しないことで起こるのではないか?という考え方をしたり、
体を巡るエネルギー(気)が上半身に多すぎて起こるのか?等の理由を、中国医学の理論をもとに探していきます。

その結果、必要と判断した経絡やツボに刺激を施すことをします。
結果、頭痛がその場で消えたりしますが、面白いのは、頭痛と一緒に、はじめの検査で痛みが出ていた、同じ経絡上の足の指に感じた痛みなども、改善されたりすることですね。

臨床の経験を積んでいると、古代の人の理論は、経験医学なのだなと実感することが多いです。

古代からの医療の特徴としまして、「免疫力を上げる」ということを目的にしている医療が多いのですが、鍼灸もその例外ではなく、患者さんを治すのは、患者さん自身であるということです。

我々は、患者さんが治る力を取り戻す、そのお手伝いをしているだけですね。

お医者さんが得意とする病気や怪我は、素直に、お医者さんへ行かれることが良いと思います。

折れた骨をくっつけることや、ヘルニアの手術なんかは外科の先生が専門ですし、内臓を切って、腫瘍を取る手術は内科の先生のお仕事です。
血管の縫合なんかも、お医者さんにしかできない難しいお仕事です。
最新の設備で、病気の原因ウイルスや細菌が判明したら、その病気に合ったお薬を貰うのは、お医者さんが一番です。
私もよくお世話になっています、武豊醫院の耳鼻科の先生なんかも、私ではどうしようもない領域のことをお世話になっています。

その病気や、怪我の治療での回復を早めたい時や、
検査では異常がなかった。でも、なんとかしたい。
そういうときは、私はお力になれるかもしれません。

結論としましては、はじめにも述べたとおり

理想は「体の定期的なメンテナンス」として。
原因不明の病気やつらさなどがあるときに、「西洋医学と違うアプローチを試してみたい時」

などに、当院の利用を一考されてみてはいかがかと思います。